先週、
木工家の賀來さんがご家族で遊びに来てくださいました。
ひととおり家を見ていただいて、ベーグルサンドなどを召し上がっていただいた後、その代金を身体で支払っていただきました。うへへ。

今日はベンチを作ってくださるとのこと。お願いします!

中庭に置いてある材木の中からよさげなものをピックアップしていただきました。

車にはいつも5人分くらいの大工道具が積んであり、いつでもどこでもワークショップができる準備が整っているそうです。…すごい。

当然のようにポケットからメジャーを取り出し寸法を測ると早速ノコギリを手に取られました。設計図は頭の中にあるんですね…。

ぴっ、と鉛筆で線を引くと、後はがしがしとノコギリを引いていきます。

「言ってみれば木はストローの束みたいなモンだから、ストローの断面を切っていくのか、ストローの間を裂いていくのかで刃の選び方も変わってくるよ」と賀來さん。
そう言って見せていただくと、確かに左は刃のひとつひとつがナイフのようになっていて、木の繊維を切断しやすいように、右は刃がのみのようになっていて、木を切り裂くようなつくりになっていました。なるほど。

のこぎりはあくまでも引く道具で、押して切る道具ではないと教えてもらいました。
また、引くときにも無理な力は入れず、木にひっかかる抵抗に負けない程度の力で引けば疲れずに切り続けられるとのことでした。
職人さんは何年も仕事を続け、道具を使い続けるので、正しい使い方を習得し、その上で「いかに疲れないか」を考えているそうです。

見ていると、いともたやすく材木がベンチに変わっていきます。驚嘆。

「人間の構造として、腕を引くと外側に開いていくんだよね。それをまっすぐにするために足を半歩引いて、あらかじめ身体を斜めにしておけば、腕が胸にぶつからずにまっすぐ引けるでしょ」
なるほど。

「木に対して刃を立てれば抵抗が強くなり、力が必要になる。刃を寝かせれば抵抗は弱くなるけれど、そのぶん時間がかかる。最初に寝かせて表面にラインを刻んだあと、ギアチェンジするように刃を立てればまっすぐ切れるでしょ」
…なるほど。

木の長さによって身体の使い方がころころと変わっていきます。
しかし、あくまでも刃の運動を邪魔しないように身体を動かしておられました。

ベンチの足は少しだけ斜めにカット。賀來さん曰く、斜めがきついと西洋風に、垂直に近いほど和風に感じられるそうです。ほー。

座面には少し木の質感が感じられるものを。って、最初からここにコレを使うことがイメージできてたんや…。

キリもなんとなく木に押し付けて穴をあけるイメージでしたが、これは転がして側面の刃で切っていく道具なんだとか。
逆にここまで何も知らない自分ってすげぇなという気になりました。
「ホームセンターで使い方までは教えてくれないからね。正しい道具の使い方を学んで、木の板だったものが自分の手で椅子や棚に変えられる。最高の材料で最高の椅子を一脚仕上げるのも木工家として立派だけれども、その楽しさを一人でも多くの人に伝え、『ものづくりの復権』をしていくことも"今の"木工家の仕事なんじゃないかと思っている」と賀來さん。
以前にお話を伺った時よりも、シンプルでやわらかい目線になっておられると感じました。

今回制作していただいたベンチは はなとね のお庭で座っていただけます。
賀來さん、オモロい時間をありがとうございましたっ!